【対談】トップ営業が大切にしていることとは?サイレントセールストレーナーに聞いてみた
「自分の成功体験を伝えても、部下ではうまくいかない」「テッパンの営業トークなのに、部下ではお客さまにまったく響かない」こんな悩みを抱えている営業マネージャーは多いのではないでしょうか。
2019年11月に『トップ営業を生み出す 最強の教え方』を出版された渡瀬謙さんと、カクトク株式会社営業統括の田口が、営業成績を確実にアップさせる秘訣について対談しました。
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渡瀬 謙(わたせ・けん)
サイレントセールストレーナー / 有限会社ピクトワークス 代表取締役
1962年、神奈川県生まれ。小さい頃から極度の人見知りで、小中高校生時代もクラスで一番無口な性格。明治大学卒後、一部上場の精密機器メーカーに営業職として入社。その後、(株)リクルートに転職。社内でも異色な無口な営業スタイルで入社10カ月目で営業達成率全国トップになる。94年に有限会社ピクトワークスを設立。広告や雑誌制作などを中心にクリエイティブ全般に携わる。その後、事業を営業マン教育の分野にシフト。内向型で売れずに悩む営業マンの育成を専門に、「サイレントセールストレーナー」として、全国でセミナーや講演などを行って現在に至る。 主な著書に『内向型営業マンの売り方にはコツがある』(大和出版)、『「しゃべらない営業」の技術』(PHP研究所)、『相手が思わず本音をしゃべり出す「3つの質問」』(日本経済新聞出版)、など多数。
田口勇貴(たぐち・ゆうき)
カクトク株式会社 / 営業マネージャー
通信回線の個人・法人営業や国内最大級の美容系集客サイトの新規掲載店獲得営業など20年以上の営業歴あり。これまで所属した会社すべてで社内表彰を経験。営業成績は常にトップクラスを誇る。現在は、新人営業職向け営業研修など講師業でも活躍中。これまでに受講した営業職は400名を越える。
営業時代に出会った渡瀬氏の書籍を読んで営業人生が大きく変わった
田口: 私は20代後半ぐらいから営業を始めたのですが、その時の仕事が大手のインターネット回線を個人や法人のお客様に飛び込み営業して売るという内容でした。
人生で初めて営業をやることになり、「これはお前の担当クライアントだ」とリストを渡され、そのリストが営業人生の始まりでした。
そのリストは自分より経験もあって成果も出している営業の方々でも成約に繋げることができなかったリストで自分が同じことをやっても成果に繋がらないと思いました。
それでどうしたら良いだろうかと本屋で色々な書籍を探していた時に、ちょうど渡瀬さんの「本音を引き出す「3つの質問」」を手にしました。
本では「喋らない」というキャッチフレーズがありましたが、要は聞くことが大事だと思いました。強いクロージング、プレゼンテーションは当時の自分はできないけど、聞くことならできると思いました。
本で読んだ内容を実践して成果を出したことで自分にとって大きな自信となりました。
渡瀬:営業未経験なのに他の先輩のやり方を真似るのではなく、他の人と同じことをやってはダメだという発想が良かったのですね。
田口: 僕もそう思います。
メーカー営業からリクルート営業へ転職
編集部:渡瀬さんは最初はメーカーの営業でしたよね。今の営業スタイルはどのように築いたのでしょうか?
渡瀬:メーカーの営業の時は特に営業スタイルとかはありませんでしたし、そういうことを考えることもしなかったです。当時のメーカーの営業は田口さんの話と比べても全然ぬるいです。
代理店があって、顔を出せば勝手に売ってくれる。どちらかというと営業は仲介役みたいなかんじでした。だから営業スタイルがどうこうという意識はあまりなかったです。
メーカーの営業を辞めてリクルートに入ってからが「営業ってやっぱり厳しいんだな」と感じました。
編集部:渡瀬さんはリクルート時代に壁にぶつかったとのことですが、そのとき何か変えようと思われましたか?
渡瀬:はい。前のメーカーの営業では普通に売っていれば良かったので苦労することはありませんでした。しかし、リクルートに入ると個人戦で成果を出す必要がありました。そこで大きな壁にぶつかりました。
営業しても売れなかった時に変えたこと
編集部:リクルート時代はどのような営業スタイルをとっていましたか?
渡瀬:周りの人は本当に明るくて元気で、喋りがうまい人ばかりでした。しかもみんな営業成績が良かったです。
それを見せつけられると、「この会社(リクルート)の営業はこのパターンで行かないと売れないんだ」と思うようになりました。
ただ、周りに合わせようとするほど、本来の自分との乖離が大きくなると感じていたのも事実でした。
編集部:自分に向いていないやり方を続けるのはとても苦しいですね。
渡瀬:その通りです。苦しい上に売れない状態も続いていて、もう辞めようかとも思いました。でも最後に開き直って営業に行ったところ、意外にお客さまの反応が良かったのです。自分の素のままで営業することで手ごたえを感じた瞬間でした。
編集部:ありのままの渡瀬さんの雰囲気の方がお客様にとってよかったのかもしれないですね。
渡瀬:お客様と会話がちゃんとできているかを当時は意識していたと思います。
トップ営業の2人がアイスブレイクで意識していること
編集部:渡瀬さん、田口さんにお聞きしたいのですが、お二人はアイスブレイクで意識していることはありますか?
田口:アイスブレイクはただ褒めるのではなく、ぼそっと褒めることが重要だと思っています。褒め方でセールストークだと感じるものと感じないものって何が違うのかなと思ったのですが、本当にいいなと思っている時ってぼそっと褒めるんですよね。
「その髪型いいですね!」って言うと相手はセールストークに感じることが多いじゃないですか。しかし、「それいいですね…」と自分に言いかけるかのように、独り言のようにぼそっと言うのは自然で良いと思います。
「美味しそう」とかでもそうじゃないですか。「あれ美味しそう!」とか声を大にして言う時ほど心の中では思っていなくて、本当に美味しそうな時こそ「美味しそう…」と思うことが多いと感じています。
編集部:褒めるって難しいですよね。意識しすぎると逆にわざとらしくなってしまいますし。
渡瀬:おっしゃる通りで、相手を直接褒めるやり方だとセールストークっぽくなってしまって、大体警戒されてしまいますよね。
編集部:渡瀬さんはアイスブレイクで意識していることはありますか?
渡瀬:一般的なアイスブレイクは雑談で盛り上げなければいけない、相手を笑わせなければいけないなどの思考になりがちです。
特にそれらが苦手な人ほど「盛り上げなければ」となります。そうなるとただ面白い話題をインプットして喋ればいいのではないかと思ってしまうんです。
でも違います。面白い話題をふったとしても相手が興味ある話題や知っている話題じゃないと効果はありません。
アイスブレイクって単純に自分が喋るのではなくて、相手にいかに喋ってもらうかが大事です。会話はこちらが喋るだけでなく相手が喋っても会話になります。
相手側の話す量を増やせば増やすほどアイスブレイクの効果が高まります。ガードが上がっている相手に対してガードを下げることができます。
編集部:いかに相手に喋ってもらうかが大事ですね。
田口:人って口を開いた人に警戒心を解いていくということがあるので、自分に対して口を開いてもらうというのを最初に意識するとアイスブレイクの質が高まるかもしれません。
渡瀬:また「相手に興味がある」と見えるような受け答えがとても重要です。相手に質問して答えてもらったことに興味がなかったら答える側も「答え甲斐がないな」と思い、ガードが上がってしまいます。
相手の答えに対して「こういう考え方なんですね」と受け止めて、「それどういうことなんですか」とツッコミが入ると、「この人は自分の話に興味を持って聞いてくれてるんだ」となり好感度がアップします。アイスブレイクが上手い人はそれが自然に出来てしまいます。
相手のガードを下げる方法
田口:相手のガードを下げる方法として、個人的な話に持っていくことを意識しています。営業として相手に会った時はお互い会社を背負っているので下手に「イエス」と言えません。
そこで、その方の名前を呼んで「個人的なこと聞いて良いですか」とか「個人的にはどう思いますか」という質問を先にしています。
そうすると相手にとっては逃げ道があって、「(会社はやるかどうか分からないけど)私個人としては良いと思います」という相手のイエスが引き出しやすいです。
「会社としての回答ではなく、あくまで私個人としての感想ですが良いと思いますよ」などと言ってくれるので話を次の段階に持っていきやすくなります。
次に何をするかというと、相手が自分の味方になってくるという話になり「決裁者ってどんな人ですか?」「2人で決済者にOK取りに行きましょう」という話に持っていくことができます。
僕は一通りプレゼンが終わった後に必ず「今の話を聞いて個人的にはどう思われましたか」と伺うことにしています。
渡瀬:すごくいいですね。「個人的には良いと思うんだけど、上に掛け合ってみないとわからないな」と相手の回答をもらえたら「どこが引っかかりますか?」と課題も見えてきますよね。そうするとあとはどうすればクリア出来るかに絞ることができますね。
田口:「個人的には良いと思います」の状態にもっていけると、あとはその話をどのように決済者にもっていくかと言う話に道筋が出来ます。
渡瀬:それはすごいです。「どうですか」と言うよりも「個人的にどう思いますか」と今度から聞くようにします。
田口:このやり方だと大体NOは出ないですね。
渡瀬:それでNOと言われたら本当にダメなパターンです。「個人では良いと思いますよ」と言われたら、「例えばどこが」とか深掘っていくとより話が核心に入っていけますね。
営業の仕事は気合いで売るのではなくお客様に買ってもらうこと
渡瀬:田口さんにお聞きしたいのですが、今色々な営業の現場に出られていて、いわゆる気合いとか根性論みたいなものは今も根強く残っていると感じられますか?
田口:それはあると思います。結局、最後は気合いになってしまう。論理的にやっていても最後はともかく頑張って足で稼げということに結論づけてしまう人が多いです。
渡瀬:なるほど、まだそういう人がいるんですね。頑張るのは社内だけで客先に行ったら頑張るなと伝えたいです。気合を入れて売る気満々の営業マンなんて目の前にしたらそれこそ逃げたくなりますからね。
営業だからお客さんだからという以前に、単純に人と人と話している。商談もいってみれば普通の会話ですし、会話をするにあたってどちらかが気持ちを押していたり、どちらかが下心を持っていたりしたら普通の会話になるわけがないんですよね。それで相手が心を開いてくれるわけがないですし。
営業だから売りにいくというよりは、普通の会話をしようという気持ちを持てることが理想だと思います。そのためには格好をつけるのではなくて、素のままでいくのが大事です。喋るのが苦手だったらそのままでいいですし、方言丸出しのほうがむしろ好印象を与えたりします。
平常心でいくということがクリアできればお客様と良い関係を築くことができます。
編集部:素朴な疑問ですが、普通の会話をしにいくだけでは売れない気がします。ただの会話で終わってしまったりしませんか?
渡瀬:その疑問はごもっともです。正確に言いますと、営業の仕事は売ることではありません。売ることではなくて相手に「買う」と言ってもらうことです。
編集部:どう違うのですか?
渡瀬:商売が成立する瞬間はどこで決まるかというと、営業マンの意思ではなくて、100%お客様の意思です。お客様が「買う」と言ったときが商談成立の瞬間です。
田口:その理屈が理解できると行動に余裕が出ます。売ろうとする気持ちが強いほど、営業マンに余裕がなくなり、それが相手に伝わることで売れなくなります。
反対に相手に買ってもらうというスタンスで組み立てると自分の対応に余裕が出て、相手も安心してくれます。
渡瀬:余裕が出るとお客様の言葉も耳に入りますし、ちょっとした態度も目に留まります。相手を冷静に見ることができれば、信頼関係につながっていくでしょう。
お客様に昔の話を聞くことで未来の話をすることができる
田口:以前、渡瀬さんが話してくれた内容で人は未来の質問を突然されても答えられないが昨日、今日と順番に行動を聞いていくと、「明日何がしたい?」の質問に即座に答えることができるというのが僕の中ですごく刺さりました。
多くの営業マンは、いきなり未来の質問である「ニーズはありますか?」と聞いてしまいがちです。それを過去の質問から始めて、現在、未来へとつなげて聞くことで、相手の頭の中が整理されて、自然に答えを引き出すことができるのですね。
渡瀬:まさにその通りです。
田口:そうすると相手がこれまで見えてなかったことに気付くヒントにもなったりしますよね。提案したい商品の話をする前に「昔何かやってましたか」とか「何で今までやってこなかったのですか」とか昔の話をずっと商談の中でしていて、それをすることで必然的に相手の方から未来の話が出てくることもよくありました。
渡瀬:理想ですね。
営業するときに大切にしていること
編集部:営業をされていた時に、大切にしてきたことはありますか。
渡瀬:平常心は常に大切にしています。初めての人に会うと絶対緊張するのは分かっているので、どうしたら自分が緊張しないようになるかということを意識しています。
遅刻しそうになるだけで緊張してテンパってしまったりするので絶対に遅刻はしないように心がけています。
また現役時代は、社長などの決裁者のアポを取った時に売るということをまず考えなくて、「この人にどうやったら自分を認めてもらえるかな」という思考をしていました。
そうすると会話がほぼ雑談で終わってしまうこともよくありました。
編集部:雑談だけで注文が入ったのはすごいです。お客様の信頼を勝ち得たわけですね。
渡瀬:やはり社長ともなると多くの営業マンを見てきていますから、他の営業との違いをどう見せるか、というのはいつも意識しています。
ライバル会社の商品と値段も質も似ていることはよくあります。どこで差をつけるかと言えば営業マンで差をつけるしかない。
営業で差をつけるとなるとどうするかというと、喋りが上手いとか、知識とか、そういうのを意識しがちですけど、それだけではないと思っています。
「私はあなたの言う事をちゃんと理解して聞いていますよ」と言う合図をいかに送れるかというのが営業で一番大事ではないかと思います。
田口:私もそれを意識しています。
編集部:相手の会話をちゃんと聞いてたくさん喋ってもらうことが信頼を得るために重要なことだと改めて考えることができました。
前編では渡瀬さん、田口さんに過去の営業時代や営業として大事にしていることを語ってもらいました。後編では、「トップ営業の部下のマネジメント」について話してもらいます。
インタビュー内で語られていたアイスブレイクの詳細は、渡瀬さんの最新刊『トップ営業を生み出す 最強の教え方』でチェックいただけます。本書もぜひご覧ください!
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