【対談】トップ営業に部下のマネジメント・育て方の秘訣を聞いてみた
「自分の成功体験を伝えても、部下ではうまくいかない」「テッパンの営業トークなのに、部下ではお客さまにまったく響かない」こんな悩みを抱えている営業マネージャーは多いのではないでしょうか。
2019年11月に『トップ営業を生み出す 最強の教え方』を出版された渡瀬謙さんと、カクトク株式会社営業統括の田口が、部下のやる気を確実にアップさせる秘訣について対談しました。
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インタビュー【前編】はこちらから
https://salesbrain.kakutoku.jp/?p=282
トップセールスと部下の間で生じている溝
田口:頑張って足で稼げば売れる時代もありましたが、今はマーケットが飽和状態になってきていまして新規開拓は難しくなっています。
売れやすい時代にトップセールスを経験し、マネージャーになったトップ営業たちがマーケット状況が変化しているのに、自分たちが過去やってきた営業手法をそのまま部下やチームでやろうとしていて、なかなか成果が上がらないという現象が起きています。
部下達は「このやり方は売れないんじゃないか」と疑心暗鬼になりつつも、成果を出してきているマネージャーが「俺はこのやり方で売れてきたんだ」と過去の成功に固執しているので上司と部下の間に溝が生じている気がします。
渡瀬:トップセールスの営業手法を否定する気はないですが、上司と同じことを部下がやっても今の時代では通用しないこともありますよね。
田口:難しいのは「実際にこれで売ってきたんだよ」というトップマネージャーの営業実績があるので、その全てを否定してしまうとチーム崩壊の一因となってしまうので慎重にやり方を変える必要があります。
無意識にやっていることを言語化して部下に伝える
渡瀬:マネジメントの話ですが、営業の教え方そのものを学ぶ場は少ないですし、営業って上から下に教えてそれがまた下に続いていくことがとても多いです。
たとえば、トークスクリプトを部下に覚えさせた後に営業に同行させ、自分の姿を見せる。それで「こんな流れでよろしく。あとは頑張ってね。」だけで終わることが多いようです。
できる部下はそれだけで成果を出すことができますが、できない部下は全くできないため両極端になってしまいます。
田口:営業同行させて部下を育てるやり方は今も根強く残っていますね。そのやり方が悪いわけではないですが、できる人とできない人との乖離が大きくなってしまいます。
渡瀬:なぜここまでの乖離が起きてしまうのか気づいたことがあります。トップセールスが売れる理由の1つとして無意識領域(※無意識にやっていること)の広さというものがあります。
皆さんも身近で経験したことがあると思いますが、無意識でやっていることを急に言葉にすることはできないですし、それを人に教えることもできません。
トップセールスの方が「当たり前じゃん」って思っていることが実は大事なポイントだったりしますし、営業成績が良い方ほど無意識領域が広いことに気づきました。自分では簡単にできてしまうのだけど、それを相手に教えることはできないことが多いです。
昔、トップセールスの人に「どうやったら売れるんですか」って聞いたことがありますが、納得できるような答えが返ってくることはほとんどありませんでした。例えば「お客さんと仲良くなったら良いんだよ」や「普通に雑談してれば良いんだよ」と言われました。
「なんでも良いからしゃべれば良いんだよ」とアドバイスされてできる人はいるかもしれないですが、僕はできないと思いました。
ただ雑談をすればいいと伝えるのではなく、どうやったらお客様とのコミュニケーションに効果がある雑談にできるかと考えながら教える必要があります。
編集部:トップセールスの方が無意識領域を認識し、うまく伝えられていないため、同じトークスクリプトでもできる人とできない人の差が生じてしまうわけですね。自分が無意識にやっていることを言語化して伝えることでその差は埋まりますか?
渡瀬:埋まります。そこだけの違いだと思います。最初から苦労せずに成績を出せているトップセールスの方は教えるのが苦手な方が多いですが、たくさん苦労して努力して売れるようになった方は、なぜ自分が売れることができたのかのプロセスを理解しているので人に教えるのはとても上手いです。
理由づけで納得させて部下に教える
田口:渡瀬さんにお聞きしたいのですが、部下を育てられている営業マンに共通していることはありますか?
渡瀬:私の周りで部下を育てることに成功している方は、形をそのまま覚えさせるというだけではなくて、きちんと理由づけした上で教えていることが多いです。
「このトークが良いんだよ」って教えるのは簡単ですが、なぜこのトークが良いのかという理由づけを細かく教えたほうが部下も理解した上で実践しやすいです。部下に納得させることがとても重要です。
編集部:部下が納得できれば自主的に行動するということですよね。
渡瀬:部下に納得させることができるとアレンジができるようになります。例えば「このトークスクリプトを上司に教えられたけど、今回は目的がここだから少しやり方を変えたほうがいいかな」というようなアレンジができるようになります。
部下にその思考ができる余裕が生まれると、お客様に合わせたアレンジができるようになります。
営業マネージャーとして意識したいこと
田口:営業の成果を出せる部下を育てていくために、マネージャーとして意識すべきことはありますか?
渡瀬:マネージャーがトップセールスとしてこれまでやってきたことを部下に教えるということは否定しないです。ただし、なぜ売れたのかという理由を明確に部下に伝える必要があります。
私が執筆した『トップ営業を生み出す 最強の教え方』の6つのステップにも書いてありますが、自分がこれまでやってきた営業プロセスの全てを6つのステップに当てはめてみてください。
すると「こんなこともやったな」「これをやったからヒアリングがうまくできたのか」と理解することができ、自分がなぜ売れたのかを部下に論理的に伝えることができます。
「トップ営業を生み出す 最強の教え方」売れるセールスの仕事時系列より引用
編集部:営業成績がいいと上記のような振り返りをする機会は少なそうですね。売れなければ必ず振り返りますが、売れていたら振り返らなさそうですね。
渡瀬:マークシート形式のテストでまぐれで当たってしまった問題は振り返らないですからね。次に同じ問題が来た時に間違えたりするでしょう。
編集部:売れている人こそ振り返るべきなのですね。
渡瀬:営業で成果を出した人全てが根性や気合いで売ってきたわけではありません。本人が気合い入れて頑張ったから売れたという達成感があるので、頑張るという理論になってしまいます。
やっていること全てを自分で意識していないから部下に伝えられない。やってきたことを分解すれば「意識していなかったけどちゃんとやってたんだ」と認識することができます。
部下とのコミュニケーションで大切にしていること
渡瀬:部下とのコミュニケーションでは仕事に関係ない「将来どうなりたいか?」という話はよくしていました。部下と目的を共有できるようになると要所要所でコミュニケーションしやすくなります。
「お前今頑張ってるよな。将来の目的に近づいているぞ。」や「こうなりたいって言ってたじゃん、だから今これをやったほうがいいと思わないか?」となどと伝えることができます。
田口:我々の世代はよく叱られて当たり前の世代でしたが、今の子達には叱るのではなく相手と目的を共有できるコミュニケーションの方が適切ですね。
渡瀬:部下の営業成績が悪かった場合、そこに視点を置いて「もっと売れ」と叱りがちになりますが、その部下のお客様への営業プロセスを聞いて、褒めるところは褒めてあげて、あとはこれだけやれば大丈夫という教え方をしています。
田口:普通にフィードバックしてしまうと「ダメでした」の結果に対する回答しかできないので、部下がやっていることを褒めた上でフィードバックした方が相手も納得しやすいですね。
渡瀬:仮に売れていなくても、ある程度のことはできている人は多いはずなので、そこを認めてあげて、褒めて褒めて、指摘するようにしています。
編集部:自分のやったこと全てを上司に否定されてしまうと、モチベーションも大きく下がってしまうので褒められた上で細かい箇所の指摘をされる方が「よし、やるぞ」という気持ちの切り替えがしやすそうですね。
後編では渡瀬さん、田口さんに「トップ営業の部下のマネジメント」について話してもらいました。
インタビューで語っていた営業が振り返る6つのステップは渡瀬さんの書籍『トップ営業を生み出す 最強の教え方』で詳しく説明されています。本書もぜひご覧ください!
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