カクトクでニッチな業界に強い営業のプロと出会い、確かな知見とスキルに高い満足度
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近年、スタートアップを中心に隆盛を見せるSaaSビジネス。資金調達額のランキングを見ても、SaaSスタートアップが上位に名を連ねており、ビジネスの大きな潮流になっていると言っても過言ではありません。
しかし、プロダクトをローンチできても、適切な営業やマーケティング体制が整っていなければグロースできずに終わってしまいます。一方で営業やマーケティングを効率化しようにも、市場には日々新しいツールやノウハウが溢れており、自社に合ったものを選ぶのも一苦労。
そこで今回は電子契約サービスの営業・マーケティング組織の立ち上げを経験し、現在はラクスル株式会社の運用型テレビCMサービス「ノバセル」でBtoBマーケターとして活躍されている中野竜太郎さんにSaaSの営業・マーケティング戦略について話を伺いました。
ラクスル株式会社 ノバセル事業本部マーケティング部 中野竜太郎氏 2017年、楽天株式会社に入社後ECコンサルタントとして200社以上を担当。その後、個人事業主でメディア運営、占い師、広告運用、マーケティング支援を行う。2019年に電子契約サービスのマーケティング部門立ち上げ、イベント登壇を経て、2021年1月よりラクスルに参画。ノバセル事業のマーケティング施策全般を担当している。
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ーSaaSビジネスの営業戦略で重要なことを教えて下さい。
中野:SaaSのプロダクトを売るには大きく「Webコンバージョン」「直販」「代理店」の3つの方法があります。代理店を活用するのは重要な営業手法ですが、自社でも売れるようにしておくことが前提です。
自社で売れないものを他社が売ることはできません。まずは自社で売り方を確立してから、代理店を活用しましょう。事業を拡大していくフェーズでは、代理店を活用することで効率的にビジネスを拡大できます。
ー自社と代理店の理想的な割合はありますか?
中野:理想的な割合は代理店が8割、自社が2割です。その理由は営業の人件費を抑えるためです。売れる体制がしっかりできていて、教育プログラムもあるなら、代理店を使ったほうが圧倒的にコストを抑えられます。
ただし、プロダクトローンチ後もしばらく改修が続くサービスは全て自社で行ってもいいと思います。
ーどのタイミングで代理店を活用すればいいか教えて下さい。
中野:1年間は自社で営業したほうがいいでしょう。ただし、サービスをローンチして半年もすれば、ターゲットや強みが明確になってくるはずです。自社サービスが選ばれる理由が見えてきたら、徐々に代理店を使い始めてみるのもいいですね。
代理店を増やすには、募集用のLPを作りましょう。ペライチのLPを作るだけでも、代理店から問い合わせは劇的に増えます。まずはパートナーを募集しているという意思表示をすることが何より大切です。
ーSaaSビジネスのマーケティング戦略で重要なことは何でしょうか。
中野:まず始めるべきことは、営業戦略と同じで「自社サービスが顧客に選ばれている理由」を明確にすることです。ぜひ社内で話し合ってほしいのですが、客観性を失わないように注意してください。
全ての面で競合に勝っているということはほとんどありえません。しかし、特定の分野ではどの競合にも負けないという強みがあるはずです。その強みを中心にマーケティング戦略を作り上げていきます。
もし強みが思い浮かばないというのであれば、それはサービスに問題がある可能性があります。その状態でマーケティングをしても意味がないので、サービスを見直してみましょう。
ー強みが見つかったらどのようにマーケティング戦略を作っていくのでしょうか。
中野:私はまずFB(Facebook)で広告を打ちます。机上の空論でいいので、どれくらいの成果が出るのかロジックを立てて広告を出してください。最初はロジック通りにはいきません。しかし、どういった訴求が反応がいいのか、どのバナーが効果が高いのかPDCAを回していけば、徐々に成果がでてきます。
最初の結果が悪いからと言って「FBはコストが高いから」と止めてしまうのは非常にもったいないです。はじめから成果を出すことが理想ですが辛抱強くPDCAを回していきましょう。
ーFacebookを選ぶ理由を教えて下さい。
中野:FBはリスティングに比べて、予算さえかければ反応が出やすいうえに、ペルソナを細かく設定できるからです。既にリードを持っていれば、それをカスタムオーディエンスに入れて、細かくターゲットを絞って広告を出せます。
おすすめは専門的なイベントに出席して得た名刺情報を基に、カスタムオーディエンスに入力するというやり方です。私はそれによってCPAをぐっと下げられました。
ーKPIはどのように決めればいいですか。
中野:基本的には目標の受注額から逆算していきます。仮説でいいので受注率や案件化率を決めてロジックを立ててみてください。実際にやってみるとロジック通りにはいきませんが、事前に仮説を立てるのは重要です。
なぜなら実際にマーケティングを始める前に、営業やCSに合意をとるためです。合意を取った上で施策を行えば、仮説と比べて「リードが足りてないね」「受注率が低いね」という議論ができます。
逆にこのような議論ができず、マーケティングと営業が責任をなすりつけるケースも珍しくありません。「リードを取っているのに受注できないのは営業のせいだ」「受注できないのはリードの質が低いからだ」という事態にならないためにも、数字で語る文化を作っておきましょう。
特に戦略を立てる人間は必ず数字で考えられるようにしてください。感覚値で物事を判断し決め付けると、ロジカルな議論ができずPDCAが回せません。
ーロジックを立てる時に、基準となる数字はどのように考えればいいでしょうか。
中野:業界の標準的な数字があると思うので、最初はそれを参考にすればいいと思います。競合他社のIRを見れば、「今年これくらい成長しているから、きっとリードはこれくらいだろうな」と推測することもできます。
ーサービスをローンチした後は、どのような営業組織を作っていけばいいですか。
中野:サービスをローンチしてすぐは、営業は外注するのがおすすめです。事業責任者(社長)が売りまくり、それに追随するNo.2以外のインサイドセールス、フィールドセールスは闇雲に増やすのではなく外注と共存でいいと思います。
なぜならSaaSサービスのローンチ後は広告宣伝費に投資をして赤字になることが多く、固定費となる正社員採用はリスクが高いからです。アウトバウンドが得意な会社を探して、インサイドセールスの業務は全て外注してもいいと思います。
ーマーケティングの組織についても教えて下さい。
中野:マーケティングはインハウスでディレクション、実務ベースで施策運用できる人間が一人は必ず必要です。マーケティングで失敗するケースで一番多いのは、社内にマーケティング施策を考えられる人間がいなくて、全て広告代理店任せにしていることです。
ーどんなマーケターを採用するのがいいですか?
中野:少し大きめの代理店で幅広いクライアントの案件に携わっていた人がおすすめです。それもディレクターではなくて、実際に手を動かしてきて運用の仕方が分かっている人ですね。そして、Web広告がベース施策になる事が多いのでデジタルマーケ畑の出身がいいです。
採用する時は現場で動ける人か必ずチェックしてください。ミドルクラスの中には、実際は代理店に丸投げしてきた人も少なくありません。
自分で手を動かせて幅広い業務に対応できる人を選ぶのがおすすめです。理想を言えば営業もできればなお良いです。
ースタートアップが採用するにはなかなかハードルが高そうです。
中野:営業についてはプロフェッショナルでなくても、やる意思がある程度でもいいです。営業からマーケに転身する方は少なくありませんし、そういう方なら商談の場にも立てます。自分でとってきたリードを、自分で商談までできれば文句ありません。
ーセールスツール導入のタイミングに迷っている企業も多いと思います。いつから導入すべきでしょうか?
中野:私はこれまでSalesforceを活用してきましたが、SalesforceでなくてもSFA・CRMは最初から入れたほうがいいと思います。スプレッドシートを使っている会社も多いですが、トラブルが起きた時のことを考えると大変危険です。個人情報を扱っている観点、後のデータ整備の工数を考えると、早めにツールを導入するのがおすすめです。
ー他にメリットはありますか?
中野:事業の成長を考えてもCRMは必要です。CRMを入れる一番の目的は「営業の型化」にあるからです。売れない人に対して、「このフェーズのお客さんに、こうアプローチする」という型を身に着けさせるものなので、営業の底上げができます。
逆に言えば、トップセールスにCRMは必要ありません。トップセールスは勘で最適なタイミングやアプローチがわかるものです。トップセールスのノウハウを型に落とし込んで、普通の営業が売れるようにするのがCRMの存在意義です。
ーSaaSの営業・マーケティングでよくある失敗談があれば教えて下さい。
中野:営業とマーケティングがうまく連携できずに失敗する話はよくあります。
本来ならSaaSサービスはマーケティングから営業が一丸になっていなければなりません。それぞれの役割は違えど、一つのチームになって動かなければ施策の効果も半減してしまいます。
ー営業とマーケティングが連携できない理由はどこにあるのでしょう。
中野:採用に課題があります。例えば営業部長を採用するときに、レガシーな業界で活躍してきた人材を採用してもすぐにSaaSが売れるわけではありません。気合や根性で営業をしてきた方を採用したことで、マーケティングと齟齬が生まれしまうのです。
小さな組織であれば、営業とマーケティングのマネージャーをわざわざ分ける必要もないとと思っています。どちらもできる人が兼務すれば、連携で悩む必要もありませんから。もしも組織を分けるのであれば、最低限ファクトをベースに数字で語れる文化は作っておくべきです。
ーラクスル社では数字で語る文化ができているのですか。
中野:全社的に数字で議論できる文化はありますが、その中でも所属している「ノバセル」はその意識が特に強いかもしれません。
例えばSlackで営業から「リードの質が低いけど大丈夫ですか?」と言われたら、どの商談か特定して、どの経由のリードなのかを調べます。その結果「あのイベントからのリードなので、ニーズが薄かったかもしれませんね。インサイドセールスにアポのとり方が大丈夫だったか聞いてみましょう」という議論ができます。
数字で考えられない人は、「リードの質が低いです」と言われると詰められると感じてしまいます。ロジカルに考えられる人は、問題を指摘されても改善するための意見だと思えるはずです。
ー生産的に議論できる組織はいいですね。
中野:そうですね。企業の成長を考えるなら、仕組みや体制をしっかり作ることも大事だと感じています。新卒で入った楽天では、無駄だと思えるくらい手厚い研修があったのですが、今思えばとても大事なことだと思います。教育がしっかりしてれば、どんな人も一定のレベルまで成長するので全体としてレベルが高い組織が作れます。
ー教育の話が出ましたが、SaaSの営業・マーケティングを学ぶ上でおすすめの本があれば教えて下さい。
中野:私が参考にしたのは次の3冊です。
これからSaaSのマーケティング・営業を始める人は、まずはこの本に書いてあることを実行してみてはいかがでしょううか。業務をこなしているだけでは成長しないので、どんなに仕事が忙しくても、自分を成長させるために勉強の時間をとることが重要だと考えています。
後編はこちら:テレビCMが営業活動に及ぼす効果とは?運用型テレビ CMノバセルでできること
ライター:鈴木 光平
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